お知らせ
2019/06/29
講演会
【6月29日】半蔵門ミュージアム講演会レポート
テーマ『祈りの空間』
2019年6月29日14時より、半蔵門ミュージアムを設計していただいた栗生明先生(千葉大学名誉教授、株式会社栗生総合計画事務所代表取締役)を講師にお迎えし、講演会『祈りの空間』を開催いたしました。
栗生先生は、これまで計画・設計された国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館(2003年)、平等院宝物館 鳳翔館(2001年)、伊勢神宮式年遷宮記念 せんぐう館(2012年)、かんなみ仏の里美術館(2012年)、奈良国立博物館 なら仏像館(2016年)と当館を取り上げ、「祈りのための空間」、「祈りに関わる空間」、「祈りを誘発する空間」についてお話くださいました。
講演会の内容
●半蔵門ミュージアムの構造
2018年にオープンした半蔵門ミュージアムは、もともとオフィス仕様の建物の地上3階から地下1階までをミュージアムに改修したものです。
まず外観ですが、周りは高層マンションなので互いの視線を遮る配慮が必要でした。一方、半蔵門ミュージアムは外との交流空間でもあります。そこで、視線を遮りながらもガラス面により外光がなるべく奥まで届くような設計にしました。また1階から2階にかけては従来の床の一部を取り外して吹き抜けとし、天井の高い空間にしました。1階部分の外壁は、大理石・トラバーチンの積層にしており、2階や地階の内部につながっています。
2階には談話スペース(ラウンジ)があります。壁面を半透過にしていますので、こちらも外の光がかなり奥まで入るようになっています。
3階には映像室(シアター)があります。半蔵門ミュージアム所蔵の大日如来やガンダーラ仏の映像を見ることができます。講演会場(ホール)の隣には8畳の和室を設けました。和紙の障子をつくり、たとえば外国の方が来られた際に日本文化を知ってもらうことのできるスペースとしています。
●地下展示室と大日如来
半蔵門ミュージアムのメインとなるのは、地下1階の展示室です。
エレベーターを降りると、天井が高く、奥行きのある空間が広がります。その展示室は右回りの動線になりますが、その途中に格子状のハーフウォールを設けています。これによって、展示室空間をお寺でいうところの外陣と内陣に分けています。また、地下の展示室全体をトラバーチン仕様にし、石室のなかに入ったような印象を持たせました。ここは単なるミュージアムではなく、精神性の高い御堂としての空間を保とうという意図があったからです。
外陣にあたる部分には、お釈迦様の生涯をあらわしたガンダーラ仏伝図のレリーフが展示されています。その奥が一番大事な空間です。内陣にあたるこの空間の中心に大日如来坐像が安置されています。大日如来の隣には、その化身である不動明王坐像や両界曼荼羅もあります。半蔵門ミュージアムの大日如来は運慶作と推定されていますが、いくら見ていても飽きない大日如来です。包まれていくような思いがします。この大日如来一体が、空間全体を引き締めているかのようです。
●夜間の外観
半蔵門ミュージアムの外観については、ある工夫をしました。夕刻や夜間に訪れてみると、行灯のように内部が少し明るく見えるようにしています。機会があれば、そうした時間にもご覧いただければと思います。