講演会/イベント

2018/09/16

講演会レポート

【9月16日】「ガンダーラの仏教彫刻~半蔵門ミュージアム コレクションを中心に~」 宮治 昭氏

テーマ 『 ガンダーラの仏教彫刻                   ~半蔵門ミュージアム コレクションを中心に~ 』

9月16日14時より、半蔵門ミュージアム3階ホールにて、名古屋大学・龍谷大学名誉教授の宮治昭先生を講師にお迎えし、講演会『 ガンダーラの仏教彫刻 ~半蔵門ミュージアム コレクションを中心に~ 』を開催いたしました。


講演会の内容

  


●広域ガンダーラの仏教美術


ガンダーラ美術は、インド、ギリシア・ローマ、イランという三系統の文化が融合した独特の仏教美術です。最近は広域ガンダーラ、グレイター・ガンダーラという言葉を使うことがあります。多くの仏教遺跡が発見され、新たに見付かった古い経典の解読作業などを通じて、世界的な仏教学研究が進められています。

インドでは紀元前2世紀の終わり頃からストゥーパを装飾する浮彫彫刻がつくられ、ガンダーラでは1世紀の半ばから3世紀の半ばのクシャーン朝の時代にギリシア・ローマやイランの文化も入って仏教美術が繁栄します。ユーラシア全体が安定した時代で、交易が盛んとなり仏教も広く伝わります。また、寺院にはストゥーパを中心として、僧院や講堂、仏像を祀るお堂などが建てられます。仏伝浮彫や小仏像は、ストゥーパの基壇や円筒部のところにはめ込まれました。



●半蔵門ミュージアムのガンダーラ仏伝   

「燃燈仏授記」と「兜率天上の釈迦」は、ストゥーパの正面につけていた破風飾りと考えられます。上段の場面では、立っている過去仏に、メーガというバラモンの青年がひざまずいています。メーガはお釈迦様の前世で、「将来、汝は釈迦牟尼仏陀となるであろう」と予言を与えられているのです。下の場面は、兜率天にいる釈迦ではないかと考えられます。

「アシタ仙の占相」では、お釈迦様の父浄飯王と母摩耶夫人を前にして、アシタ仙が子どもの将来を「王位にとどまれば世界を支配する転輪聖王になるが、きっと出家してブッダになるだろう」と予言し、年老いた自分はブッダになる姿を見られず悲しむ場面です。

「出城」は、上から「宮廷生活」「出家の決意」「出城」の3場面からなり、その下は坐仏と花綱を担ぐプット(童子)です。お釈迦様が真夜中に城を抜け出した際、昼間の太陽のように暗闇が輝いたと経典に出てきます。太陽神をあらわす時は正面で描かれますが、正面性は太陽のイメージと重なりますので、お釈迦様が乗る馬は正面向きにあらわされたのでしょう。

「梵天勧請」はお釈迦様を中心に、バラモン教の二大神である梵天と帝釈天を左右に配しています。ガンダーラではバラモン教の力が相対的に弱く、異民族が多かったこともあり、梵天や帝釈天がお釈迦様におまいりする図像ができあがりました。いわば神仏習合で、民族的な宗教を取り入れていく仏教の特徴が、この「梵天勧請」にもあらわれているのです。

「初説法」は、お釈迦様が悟りを開き、その教えを説法した点で、仏教の成立といえます。説法によって教えを理解し、帰依する人が出てきますので、仏伝のなかでも非常に重要な出来事です。一緒に修行した5人に説法して仏弟子が誕生し、在家の人々や神様たちが賛嘆しています。

「帝釈窟説法」は、洞窟の中でお釈迦様が瞑想しています。帝釈天が説法を聞きにおとずれ、動物や神様も集まります。山岳信仰と仏教の関係も非常に重要です。

「王の帰依と涅槃」の上段は、「阿闍世王の礼仏」ではないかと思います。下は「涅槃」で、上の場面と続いている可能性が考えられます。他に類例はありませんが、涅槃の前にお釈迦様に帰依した阿闍世王が考えられるのです。王様はひざまずき、ブッダに敬礼をしている場面です。「涅槃」には最後の仏弟子スバドラや魔王マーラなどが表されています。


   

   (講演会後、ガンダーラ仏伝彫刻をじっくりと拝観される聴講者)

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